そして、彼らはとうとうドイツ兵によって銃殺され、河のなかに沈められてしまいます。
戦争とは非情なもので、敵対し、憎む相手には、平和な時のやさしい人間の心などどこへいったのか、残酷なシーンを平気で演じます。
この短編小説の平和な時と残酷な結末のパラドックスは、狂気ではなく、心がおだやかな時の考え、思想、判断がいかに大切かを私たちに語りかけているように思われます。

最後に、残酷なシーンがサラリと描かれている最終ページを紹介します。

二人の兵士がモリソーの頭と足を持った。そして、別の二人が同様にソヴァージュさんを持ち上げた。二つの死体は、力まかせに振られたと思う間に、遠くへ放り投げられると、それぞれ、曲線を描きながら、石の重さで足を先にして、つっ立ったまま、河のなかへ沈んでいった。
水ははね返り、泡だって、みだれたが、まもなく、静まりかえった。そして、さざなみ小波が岸まで寄せてきた。
血がすこしばかり浮いていた。
士官は、あいかわらずさわやかなもので、含み声で言った。「さあ、今度は魚どもにまかせよう」
それから、宿舎の方へ帰っていった。
ところが、ふと、草の上にころがっていた河沙魚
<かわはぜ>の魚籃<びく>が眼にとまった。彼はそれを拾い上げて、中身をしらべると、思わず、にっこりとした。で、「ウィルへム!」と呼んだ。
白い前掛けをした一人の兵卒が駆けてきた。すると、プロシャの士官は、銃殺された二人の獲物を、その男の方へ投げて、命じた。「さっそくだが、この小魚をフライにしてくれないか。生きているうちにな。きっと、うまいだろうよ」
さてそこで、またパイプをふかしはじめた。

ここで小説は終わりとなりますが、みなさんはどのようなご感想をお持ちになりましたでしょうか。小説の一部抜粋と私の考えをもとにした解説なので、内容を正確にお伝えする事は出来なかったと思います。詳しくはこの短編小説をお読みください。
―編― 鶴見俊輔・安野光雅・森 毅・井上ひさし・池内 紀
     新・ちくま文学の森9 たたかいの記憶より 
    「二人の友」 モーパッサン 青柳瑞穂・訳  筑摩書房 

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